穴場的?絶景
ジャスパー国立公園、コロンビア大氷原でスノーコーチ・ツアーを楽しんだ後、宿のあるキャンモアへの帰路、ハイキングをすることになった。もともとパパは山歩きの趣味がある人で、妻子を置いて一人であちらこちらへとハイキングに出かけていた。しかし、8歳の息子は、丘の上にある小学校への通学路ですら「遠い。大変。」とぶつくさ文句ばかり。カナダでハイキングなんて無理だろうなぁと思っていたところ、「地球の歩き方」に「バンフとジャスパーを結ぶアイスフィールド・パークウェイ、"big bend"付近に2キロ程のトレイルがある」と書いていた。これなら息子も大丈夫だろう、、、と歩き始めた。
乗用車数台が止まっていた駐車場に車を止め、貴重品とビデオカメラを手に歩き出した。団体の観光バスなど全く止まっていない。個人旅行でないと寄れないスポットだ。駐車場の様子の通りハイカーの姿もまばら。ほんの少し木が生えている林を抜けると、遥か上の方まで見渡せるつづらおりの坂道が続く。木は全く生えていない。ところどころ乾燥した土に高山植物と思われる花や草を目にした。また、ここはおそらく何億年も前には海の底だったのだろう。貝の化石がくっついた石をわずかながら発見した。それらを興味深そうにカメラに収める女性ともすれ違った。
坂道の傾斜がきつく足が疲れたせいか、息子の文句の相手をするのが疲れたせいか、「こんな単調なトレイル、つまらないよ!人がまばらって事は人気が無いって事でしょ?」と、1時間程度しか歩いてないのにもう引き返したい気分になった。元気なのはパパ一人。ふと振り返ると、なんと息子をおんぶしている。背中で小僧は不二家のペコちゃんのような微笑み顔。つづら折りの坂道が終わったあたりで、残雪がちらほら。いきおいよくパパの背中から飛び降りて雪に向かって走る息子。雪の玉を作って雪合戦をするつもりらしい。私が棒のような足をひきづっていると、パパが下山してきた白人の女性に頂上までどれくらいかたずねてくれた。「15分。」この言葉に励まされ、足を一歩、二歩と進めると、、、。
「すごい!すごい!すごい!こんな絶景見た事ない!。」突然、目の前に素晴らしい景色が広がった。アイスフィールド・パークウェイあたりの景色を「スイスを50ばかり一カ所に集めたようだ。」と形容した人がいるらしいが、私もこの景色を見た時は「私はハイジよ!」と叫びたい気分だった。足下は1000メートル以上はあるんではないかと思われる崖。自分がちっぽけな存在に思え、思わず吸い込まれてしまいそうな気持ちになり足がすくむ。
日本では大抵こういう場所には柵があるんだよなぁ。でも、ここには人工の物は全く無い。右手奥には氷河が広がっている。これはパークウェイからは見られないサスカチュワン氷河。車を降りて歩いたからこそ出会えた絶景だ!こんな景色はNHKのドキュメンタリー番組を撮るカメラマンしか見られないと思っていた。一般人がこんな景色を見る事なんて不可能だと思っていた。なんて、表現したらいいんだろう?この絶景。
ガイドブックのほんの数行を見て立ち寄ったトレイル。特に期待もしていなかっただけに、これだけの景色が見られたのはすごい得をした気分。「ヨセミテを超えてるよ。」とため息をつくパパと二人で氷河をじっとみつめていた。その横では地リスを追いかけ回す息子。穴からピョコッと顔を出しては、他の穴に向かって猛烈ダッシュ。まるでモグラたたきのモグラみたいだ。残念ながら子供は絶景には全く興味が無い。大人になってこのビデオを見直して、ある時ふっと「すげぇ!」と気づく時が来るのだろうか?でも、地リスのおかげで楽しいハイキングになったね。